日記・コラム・つぶやき

たんばラブストーリー

これは、ある町で本当にあった
「小児科のお医者さん」と「お母さん」のラブストーリーです。

「お母さん、苦しいよ」
ある夜のことです。子供が喘息の発作で苦しんでいたので、お母さんは病院につれていきましたが、夜中の救急外来は、たくさんのひとで大変混雑していて、二時間以上待ってやっと診察を受けると、そのまま緊急入院となりました。
「こんなに辛いのに、長い間待たせてごめんね、あとで病室にも見に行くから」と先生はいい、また診察に戻りました。

約束どおり、先生が病室に来られたときには、もう夜が明けようとしていました。
「もっと早く来たかったけど、患者さんが多くて今までかかってしまった」そうすまなさそうに言う先生。
もうすぐ、朝の診察が始まります。
「先生は、寝てらっしゃらないんだ」
お母さんの胸がいたみました

この町で、入院できる小児科があるのはこの病院だけなので、夜中も多くの患者がやってきます。

高熱や激しい腹痛、頭痛などの急病のほか、仕事が休めないで夜来た人も、明日遊びに行くので薬が欲しいという人も、昼間は待たなければいけないからという理由で来る人もいます。
先生は、患者さんを皆きちんと診たいと思うけれど、時間がかかると待っている患者さんを長く待たせることを忍びなく思ったり、睡眠不足と疲労で働かない頭で、診断を間違ってしまったり、医療ミスを犯したりしてしまうのでは・・・というプレッシャーとも戦っていました。
今までも、何人もの医師が体を壊したり、心が折れて去っていきました。
「僕も、もう限界です、この病院から小児科はなくなってしまうでしょう」とつぶやきました。

お母さんは思いました。
「この町の豊かな自然と、あたたかい人々のなかで、子育てをしたいと願っているのに、この病院の小児科がなくなったら、どうやって子供の命を守ればいいんだろう、どこで、お産をすればいいんだろう」
お母さんは、他のお母さんたちと「小児科を守る会」をつくりました。
そして、市や県にかけあって、「小児科医を増やしてください」と訴えましたが、
「お医者さんが足りないのは、この町だけではありません。どこも皆同じなんです」と断られてしまいました。
お医者さんを増やすことができないなら、今いる先生に頑張ってもらうしかないけれど、今にも崩れ落ちそうな先生の背中を思うと、「もっとがんばって」とはいえません。
「今居てくださる先生を大切にしよう、先生が働きやすいように協力しよう」

でも、どうすれば、いいのでしょう。

「そうだ、患者さんを減らせないだろうか」

本来夜間の救急外来は、朝まで待っていると命にかかわる重症の人のためにあります。それが、「空(開)いているから」という理由で、ふらっとコンビニに立ち寄るようにやってくる軽症の患者で混雑し、本来治療を受けるべき重症の患者の治療が遅れたり、先生が疲れてしまっているのです。
一方で、子供の病気は急変しやすく、手遅れになっては・・・という不安も、夫婦で働かなければいけなくて、子供の病気で休んだらクビになるかもしれないし、クビになったら次の仕事がみつからないかもしれないという事情も、よくわかります。
でも、不安になるたびに闇雲に救急に走るのではなく、少しの知識を持って、一呼吸置いて考えることができたら、受診を減らすことができるかもしれない。
お母さんたちは、先生と相談しながら、受診の目安がわかるフローチャートや手引きを作り、健診や親子の集まる場所で配りました。

日ごろから何でも相談できる「かかりつけ医」を持つことも大切でした

その子の体質や生育歴、家族のことをよく知り、変わったことがあれば専門の病院に紹介もしてくださいます

「これでいいのかな」
そう思っているとき、先生が言いました。
「近頃夜中にかかってくる電話の内容が、今までの『診て!』から『こういう症状なんですが、行ったほうがいいですか?』にかわってきた。これは、大きな変化だよ」
その言葉に勇気を得て、お母さんたちは活動を広めていきました。
その結果、夜間の受診者数を一年前の半分以下にまで、減らすことができたのです!

夜間の救急外来は、本当に必要な人が必要な治療を受けられる、そんな健全な状態に戻りました。
お母さんたちは、お医者さんを守ることで、子供たちを守ったのです。

お母さんたちは気づいたのです。
「医療」は、お店で売っている「商品」ではないことに
病院は、「医療」を売っている24時間営業のコンビ二ではないことに
「医療」は、水やエネルギーや環境と同じ限りある「資源」であり、患者と医療者は、その資源を有効に活用し、守り育てていくパートナーであることに 。

もう一つ、「感謝の気持ちを表現すること」も大切でした。
治って当たり前なんじゃない、精一杯治療してくださった人々に、感謝の気持ちを、金品でなく「ありがとう」と言葉で伝えたことが、先生の疲れを癒し、
「明日もがんばろう」という気持ちに繋がったのです。
お母さんたちの活動を知って
「この町で働きたい」という小児科のお医者さんも新しく来てくださいました。

この
「患者さんのために出来る限り精一杯の治療をしたい」というお医者さんと
「私たちのために頑張ってくださるお医者さんの働きやすい環境を作りたい」という患者側の思いが通じあった「相思相愛」のラブストーリーに、今、小児科だけでない日本中のお医者さんたちが「釘付け」です。
なぜでしょうか。

昨今の医療事情は、医療者と非医療者の対立を生んできました。
患者は「生活はいつまでも苦しいのに、社会保障はけずられ、保険料の負担も重い。窓口で払う医療費も高い。なのに、3時間待って5分診療、医者はまともに話も聞いてくれないし、言われるままに治療をうけるしかない。そして医療ミスがあっても真実は隠され、患者は泣き寝入りするしかない」と嘆き
医師は「鼻水くらいの軽い症状で深夜の救急外来にやってきたり、思い通りにいかないと医師や看護師に暴言を吐いたり暴力を振るう患者にうんざりだ。医療は完全なものじゃない。治療した結果が悪かったからといって訴訟になったり、逮捕されるのでは、手の出しようが無い」と嘯く
ヤブ、ミスを繰り返すリピーター医師も、非常識なモンスターペイシェントも実在しますが、どちらも全体の中の一部、患者のほとんどが善良で、医師の殆どが誠実なのに。
私たちが戦うべき「敵」は、相手ではなく、外にいるのに

患者の医療費の負担が重いのも、医師の数が足りないのも、医療にお金を投じない国の政策のせいなのです。

これは、医療や福祉や教育にお金をかけない愚策を隠すために、作られた対立の構図です。

多くの人々が、それに気づかずにいる時代に、丹波市で出会った「ふたり」は、そんな対立の構造から抜け出し、感謝し思いやりあい、この「恋」を実らせました。

これは、丹波市で本当にあった「小児科医」と「お母さん」の「ラブストーリー」です

しかし、この「ラブストーリー」は、まだ「ハッピーエンド」を迎えていません。
県立柏原病院で医師が増えたのは小児科だけ。他の科の医師は減り続けています。丹波市の財政も「危篤状態」で、病院そのものが無くなってしまうかもしれません。
国の間違った政策に「ふたり」はまた引き裂かれてしまうのでしょうか・・・

お母さんたちは、今も頑張っています
この町の医療が崩壊し、たとえ病院がなくなってしまったとしても、自分たちは出来る限りのことを精一杯やったのか?と後で後悔することがないように。
そして、崩壊の危機にある日本中の地域医療を立て直すために、立ち上がろうとする人々の背中を、押すことができたら・・・と 願っています。

私は、この「たんばラブストーリー」は、まだまだ終わらない、そう思います。
それは、このお話の「続編」は、私やあなたが主人公になって、私やあなたが住む町を舞台に、これから描いていくからです。

**事実をもとに、脚色および再構成させていただいきましたフィクションです**

県立柏原病院小児科を守る会HP http://mamorusyounika.com/

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